混乱の波をようやっと乗り越えりゃ 新しき香の西風が吹く
半髪頭を叩いて聞こゆるは 因循姑息の音ばかり
文明の花の蕾を突くのは 刀に非ずと御国は説く
古今東西この世のあらゆるを 兎も角も書物に学びます
祖国への愛をこの筆にこめて勉学に励みませう
この学び偏に道と成り 花開くその時まで
嗚呼 移れば変わる浮世かな 気取った横文字も御愛嬌
書生に車夫(くるまや)に娼妓(たわれめ)も すべてはハイカラの開化主義
この志決して見失わぬやうに 開けゆくこの都に満開の花を咲かせませう
銀座の街頭(とおり)をやをらそぞろ歩きゃ カラコロ鳴るのは日和下駄
散切り頭を叩いて聞こゆるは 行き交う辻馬車の喇叭(らっぱ)の音
勉励疲れて息抜きするのなら ちょいと寄席にでも行きませうか
牛鍋食わぬは開化不進奴(ひらけぬやつ)と言えど 氷菓子の食べすぎにゃ気をつけな
ひねもすひぐらし硯に向かひて勉学に励みませう
この思い偏に仁と成り 実を結ぶその時まで
嗚呼 栄枯盛衰の浮世かな 艶やか華やかに端手衣裳
花見に縁日に遊郭(くるわ)までも すべてはハイカラの開化主義
この志決して惑わされぬやうに 開けゆくこの時代に爛漫の花を咲かせませう
嗚呼 千姿万態の人生かな 敢え無く散りぬるもまたおかし
天文 地理 歴史 究理 修身 されども放蕩はほどほどに
嗚呼 移れば変わる浮世かな 気取った横文字もご愛嬌
書生に車夫に娼妓も すべてはハイカラの開化主義
この志決して見失わぬやうに 開けゆくこの都に満開の花を咲かせませう
爛漫の花を咲かせませう 文明の花を咲かせませう