13日の金曜日にミッドサマーを

こんにちは。Ashです。

 

去る13日、めでたく●●歳の誕生日を迎えました。

今年、誕生日を口実に以前から気になっていたAmazonの欲しいものリストをTwitterで公開させていただいたのですが、予想以上の反響をいただいて本当に驚いています。

素敵な贈り物とメッセージを下さった方々、本当にありがとうございました!

いただいたものは生活と創作に大事に役立てさせていただきます。

 

さて、その13日当日、私は一日有給をとり、昼と夜にそれぞれ都内で予定を入れ、間の時間をどう過ごそうか考えていました。

そして思い立ったのです。

今話題のミッドサマーを13日の金曜日の誕生日に一人で見たら楽しいのでは?

Twitterからたびたび噂が漏れ聞こえていたミッドサマー。

そのあらすじは

家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

というもの。

 

溢れ出る不穏な空気に少しだけ不安になり、事前にTwitterでアンケートをとってみたところ。

綺麗に4割の方に止められました。

 

しかし、お付き合いの長い方はご存知の通り、私はグロ・鬱・バッドエンドなんでもござれの雑食を通り越した悪食を自称しています。

そんなどうでもいい自信と、楽しい予定が入っているための浮かれポンチにより「イケるやろ!」と判断し、決行に踏み切りました。

 

そんなわけで、都内某所の映画館にて、13日の金曜日にひとりぼっちでミッドサマーを鑑賞してきました。

が。

 

  • 開始15分で「これはヤバいところに来てしまった(しかしもう引き返せない)」という、絶叫マシンでめっちゃ落ちる直前に似た絶望感を覚える。
  • 買ったコーラを飲む余裕がない
  • 中盤のグロシーンで、近くに座っている二人組の女の子が明らかに気分が悪そうにしていて心配になる。
  • 映画中10回くらいスクリーンから目を逸らしてしまった。
  • 自分の心臓の音が聞こえてくる。
  • 過酷なシーンが多すぎてセクシャルなシーンが中休みにさえ思える。
  • 汗がやばい。
  • エンディングの圧倒的なカタルシス感(耐え抜いたという達成感も相まって)
  • 終演し席を立つ際、近くに座っている二人組の女の子が放心状態で微動だにせずすごく心配になる。

 

……という、先の自信が粉砕されるような惨敗ぶりでした\(^o^)/

 

私には宗教や民俗学、文化人類学にもなんの知識経験もないので、そういった側面は置いておいて、個人的に感じたことについて書きます。

ネタバレや直接的な表現は避けますが、人によってはご注意くださいませ。

 

ヒロインの不安定な精神状態の演技・演出がリアルすぎる

「メンタルの不調の治療を受けたことのある人はトラウマを抉られる」といった内容の評価を事前に聞いていたのですが、意味がよくわかりました。

ダニーが、今にも溢れて崩れそうな感情を人目を避けつつなんとか堪えようとするシーンが度々あるのですが、女優さんの表現がすごくリアル。

中でも特にすごいと思ったのが、中盤の衝撃のシーンで、目の前で起こっている事を受け止めきれず半ば解離状態に陥る音と映像の演出。

個人的にグロテスクなあれやそれよりも一番抉られました。生々しすぎか。

 

それから、不安定なダニーに対する恋人のクリスチャンの反応も刺さるものがありました。

邪険にすることもないけれど、疎ましさを隠しきれていない、真摯になりきれていないこの感じ……

この態度を不誠実だと真っ向から否定できれば、ラストももう少しくらいは晴れやかな気持ちが伴ったのかもしれませんが、私はダニーとクリスチャン両方に共感を覚えてしまいそれができませんでした。

メンタルの不調や、それを看護した経験のある方はきっと似たような感想を持つのではないか……と思います。

(もしかして、止めてくれた4割の方はこれを心配してくれていた……?)

 

音楽に追い詰められていく感覚

私は映画を鑑賞する際は大抵音楽にも注目しているのですが、本作の音楽の効果も素晴らしかったです。

特に弦楽器の不協和音がすごく効果的に使われているのが、冒頭のヒロインの家族がアレするシーンからとても印象的でした。

私は特にホラー映画の音楽に昔から強い憧れを抱いており、いつかそういった作品の劇版音楽を作ったりしてみたいと今でも夢見ている節があるのですが、本作の音楽はまさにその理想形といった感じでした。

 

緊迫のシーンの音楽だけでなく、ホルガ村では楽器を演奏するシーンも多くあり、特に後半のダンスの際の音楽はとても楽しく賑やかなのですが、もうどこから狂気が襲いかかってくるかわからないという緊張感からその陽気な旋律にも追い詰められていくような心地になります。

是非サウンドトラックで音楽単品でも楽しみたいと思うのですが、私は今現在、音楽を聴くだけで過酷なシーンの数々が頭の中に蘇ってきてしまい、Youtubeのサウンドトラック動画も開始30秒でギブアップするという有様です。

早くもう少し記憶が薄れて、純粋に音楽を楽しめる日が来る事を願っています……

 

ラストシーンの解釈

見る人によって解釈が分かれるエンディングだと思います。

私にとっては、ラストは救いでした。

というのも、もうあまりにも痛ましい展開が多すぎて、後半はずっとどうかこれ以上ヒロインに不幸な事態が起こらないでほしいと祈るような気持ちになっていたので……

あの終わりはダニーにとって救いでありハッピーエンドだと感じました。いわゆるメリーバッドエンド。どうかそうであってほしい。そうであってくれないとあまりにも惨すぎる……

 

ダニーが不安定な感情を持て余し、ギリギリの精神状態で毎日を過ごす中で、ホルガ村に来て初めて共感(というには狂気的なレベルに極端なものですが)による浄化を経験した結果があのラストではないかと思います。

もしも彼女に、なんでも話せるような同性の友人が一人でもいたら、この一連の物語はなかったのではないか。

物語の中で表現されていないだけで、もしかたらいたのかもしれませんし、もしもいたらそれはそれでエンディングの不幸指数が一気に跳ね上がってしまいますが……

 

ホルガ村はとても閉鎖的な共同体なので、その外から見たら正気の沙汰ではないようなあれやそれも、内に入ってしまえば当たり前のことで、そこに疑いを挟む余地などきっとないのでしょう。

その「余地」がラストのあの表情の内側に残っていない事を祈るばかりです……本当に……

 

終わりに

鑑賞後、今でも色とりどりの花のデザインを見るとぞっとしたり、ふとした瞬間にアレなシーンの数々が蘇ってきて三大欲求が減退する後遺症に苦しんでいますが、大変に思い出深い誕生日になりました!後悔はありません!!

よく考えたら私上京してから一人で映画館に行った事がなかったんですよね。なぜこれをお初に選んだ????

本作は現在も上映中で、未公開シーンを含むディレクターズカット版の上映もしています。

ちなみにこのディレクターズカット版、ちょうど13日からの上映だったようなのですが、私は前後の予定のためにちょうど良い上映時間のものがなく、通常版を選びました。

時間帯が合わなくて本当に良かったです。いきなりディレクターズカットを選んでいたらおそらくリタイアしていたと思います。

 

これから観たいと思っている方や、観た上で他の人の解釈が気になる方に、少しでも参考になれば嬉しいです。